『神さまたちの遊ぶ庭』 宮下 奈都 著

 2013年、1月。

 お正月休みでのんびり寛いでいた晩に、夫が突然、言い出した。

「やっぱり、帯広をやめないか」

 四月から二年間、家族で帯広へ行くことになっていた。夫が、どうしても北海道で暮らしてみたい、と希望したからだ。


最初、予定していたのは帯広。

そこをやめて、どこへ?


「大雪山国立公園の中にトムラウシって集落があって、すごくよさそうなんだ」

(略)

「カムイミンタラだよ」

 カムイミンタラというのは、アイヌの言葉で、「神々の遊ぶ庭」。そう呼ばれるくらい、素晴らしい景色に恵まれた土地なのだそうだ。


この伝聞形で語られているカムイミンタラで1年間生活するつもりは、宮下さんにはどうやらないようでした。無口な夫が二年分くらい喋って、最終的にはお子さんたちの賛同もえられて、あっさり決着がついたのでした。



 四月某日

 お昼頃まで気温は零度から上がらない日が続く。それでも、家にいるのがもったいなくて、夫婦で歩く。コートを着て、手袋、マフラーをつけて、長靴を履いて歩く。どこを歩いても眺めがいい。空気が凛と澄んでいる。背筋が伸びるようだ


新学期が始まった後の四月中旬でも、午前中の気温は氷点下。十勝地方の標高が高いカムイミンタラ。厳しい気候が続きます。一方で、自然の方から語りかけてきてもくれます。


 一月

 今年は雪が少ない。降りはじめたのは早くて、そのせいで山にはずいぶん倒木もあったのに。

 福井だと、寒い寒いと言っているうちに雪になるのが常だったが、ここ十勝では、なんだか暖かいなァと思っていると雪だ。気温がマイナス二十度を下回るようだとたいてい空は晴れている。雪は降らない。

 そういうわけで、今年は寒い。雪が少なく、空の晴れた日が多い。夜の空の冴え冴えとした美しさは言葉をなくすほどだ。天上から山裾までくっきりと星が出ている。星座と星座の間にも、細かい星がみっしりと詰まっていて、きれいだと感じるよりも先に驚いてしまう。


北陸の数少ない晴れた冬の夜。空には煌めく星々の饗宴が始まりますが、カムイミンタラで見る星空は、神々しい感じなのでしょうね。



北海道で過ごした一年間の記録は、子供たちの記録でもありました。

精神的にも肉体的にも、日々成長する子供たちと濃密な時間を過ごすことができた北海道での生活がどれほど素晴らしかったが、読んでいる私にも十分伝わってきました。

もちろん、笑えるエピソードも満載なのですが。





私がこの本をこれまで読んでいなかったのは、宮下さんのプライベートな領域を垣間見るべきではないという思いがあったからでした。でも、読んでよかった。


 十一月某日 夫の仕事

 今日も夫は部屋でスキーウエアを着て本を読んでいる。もともと尋常ではない量の本を読む人だったが、こちらへ来て拍車がかかった。本読み屋さんという職業があれば儲かるのに。


私もそのように感じていました。やはり、そうだったんですよね。


宮下先生 (夫) が北海道に発たれる前に、一緒に飲んだのがグリオット・シャンベルタン。

お忙しいとは思いますが、またお目にかかって色々とお話をしたいです。